トレンド:若い女性が“サウナで整う”時代へ

トレンド:若い女性が“サウナで整う”時代へ

日本ではサウナ人気が再燃しているが、特に注目を集めているのが「若い女性」の間でのサウナブームだ。これまで“おじさんの趣味”とされていたサウナが、いまやおしゃれで健康的なライフスタイルの象徴として、20代・30代の女性を中心に急速に広がっている。

背景には、SNSを通じた情報共有、美容・健康志向の高まり、そして女性向けサウナ施設の増加がある。特に「整う(ととのう)」というサウナ特有の感覚を求めてサウナに通う女性が増えており、「整い女子」という新しい言葉まで誕生した。

「整う」とは、サウナで体を温めた後に水風呂でクールダウンし、その後の休憩中に訪れる“心と体がリセットされたような感覚”を指す。自律神経が整い、深いリラックス状態になるといわれており、ストレス社会に生きる現代人にとって、まさに癒しの時間となっている。

この「整う感覚」に魅了された若い女性たちは、休日や仕事終わりにお気に入りのサウナ施設へ足を運び、自分だけのリセット時間を過ごしている。東京・表参道にある女性専用のサウナ施設「サウナミューズ」では、平日夜でも多くの女性客でにぎわっており、利用者の8割が20代〜30代だという。

ある利用者の女性(29歳・会社員)は「ここに来ると心がすーっと落ち着く。スマホからも仕事からも離れて、ただ自分を整える時間が持てるのが本当にありがたい」と話す。
また別の女性(24歳・デザイナー)は「肌の調子が良くなるし、夜ぐっすり眠れるようになった」と、健康面での効果も感じているという。

近年は、サウナ自体が“映える”空間としても注目されており、スタイリッシュな内装、アロマを取り入れたロウリュ(蒸気)、おしゃれなラウンジエリアなど、女性目線で作られた施設が急増している。SNSに写真を投稿し、「#サ活」や「#整う女子」といったハッシュタグで繋がる文化も広がっている。

こうした流れを受けて、既存の温浴施設も女性向けのサウナ設備を強化。パウダールームの充実、サウナ着の貸出、アメニティのグレードアップなど、細やかな配慮がなされている。

さらに、新しいビジネスとして登場しているのが「プライベートサウナ」の流行だ。予約制で完全個室のサウナ空間を提供するもので、一人で静かに過ごしたい人や、友人とプチ贅沢を楽しみたい人に人気だ。防音や照明、音楽の演出まで自由に設定でき、自分好みの“整い体験”ができるとして話題を呼んでいる。

地方でもこのトレンドは広がっており、自然と調和したアウトドア型のサウナ施設も増えている。川や湖のほとりに設けられたサウナで“ととのい”を味わうアクティビティは、キャンプや旅行と組み合わせた「サ旅(サウナ旅)」として人気が高まっている。

また、サウナに通うことが自己肯定感の向上にもつながると感じている人も多い。「自分の体と向き合う時間が増えた」「人と比べずに自分を大切にできるようになった」など、心の変化を語る声も聞かれる。

サウナにおける女性の存在は、かつての男性中心の空間から、より多様で開かれた場へとサウナ文化を変化させている。健康志向、メンタルケア、自己表現、リラクゼーションという複数の価値が融合した“現代型サウナ”は、今後もさまざまなライフスタイルに取り入れられていくだろう。