アニメ市場80億ドル超へ!IP収益配分改革に注目
若者を中心に、日本のアニメ市場が急成長する一方、収益構造やIPの権利配分を見直す動きが注目を集めている。
2023年のアニメ市場は、世界全体で約312億ドル(約3.5兆円)と試算されていたが、今後2030年には600億ドルに迫る可能性があると見込まれている 。国内市場だけでも、天皇響くように3,390億円(約23.4億ドル)と過去最高の売上を記録し、その好調ぶりを裏付けている 。
この急拡大を牽引しているのは、北米やアジアを中心とした海外展開だ。ストリーミング配信やグッズ販売が牽引役となり、2023年には全世界で約198億ドルがアニメ関連で消費されたことがわかっている。その内訳は、ストリーミングが約55億ドル、マーチャンダイジング(グッズなど)が143億ドルに上る 。
しかし一方で、国内スタジオの取り分が非常に限られている現状も浮き彫りとなった。政府機関や業界団体の指摘によれば、日本のアニメ制作会社が国際市場から回収する収益は10%未満にとどまり、中間業者や配信企業が大部分を握っている。この不均衡が、IPを持つ制作側の利益最大化に向けた改革の必要性を高めている。
IP収益配分改革へ:政府・企業・業界が一気に動く
政府は「Cool Japan戦略」の次フェーズとして、アニメIPの権利配分見直しや海外展開支援に舵を切っている。2024年には海外コンテンツ売上が5.8兆円に達し、2033年までに20兆円を目指す目標が掲げられ 、IPを国内に取り込むための制度整備が急務とされている。
一方、業界でも収益分配の構造改革が進んでいる。主導役となっているのが、制作会社自らが出資・権利を保有する比率の向上だ。かつては多くのIPが制作委員会に由来していたが、近年はスタジオ自身が版権やライセンスを握り、ライバル配信プラットフォームとの交渉力を高めようという動きが顕著だ 。
また、ソニーは2021年のクランチロール買収に続き、角川との資本提携を進めた。2025年1月にはソニーが角川の大株主となる10%超の株式を取得し、IP資産の共同活用を図ることで、グローバル戦略の基盤を強化した 。さらに、ソニーCEO吉田憲一郎氏は「制作と配信を両輪で持つことが、日本IPの収益力強化に直結する」と発言し 、業界を巻き込んだ収益再配分の力強い流れを作り始めている。
これらの動きは、制作会社の利益率向上だけでなく、労働条件の改善にも波及する可能性がある。制作資金と収益の確保によって、労働環境や職人の待遇が向上し、結果的にクオリティアップや海外市場での競争力強化に結びつくと期待されている 。