「千余回超の地震群」十島列島、噂と真実に揺れる島々

「千余回超の地震群」十島列島、噂と真実に揺れる島々

鹿児島県・十島村を構成する吐噶喇(トカラ)列島近海では、6月21日以降、激震が続いている。震度1以上の地震は累計1,500〜1,600回に達し、島内外で驚きと不安を広げている。

群発地震の実態と住民の避難行動

気象庁の発表によれば、6月21日から7月6日までに観測された震度1以上の揺れは1,500回超、中には震度5強や震度6弱レベルの強震も含まれる。とりわけ7月3日午後4時13分に発生したマグニチュード5.5、震度6弱の地震は群発地震開始以降最大の揺れで、悪石島など島民に強い揺れをもたらし、避難指示が発令された。

十島村の村長は、地震の頻発に「島外避難を考慮する段階に入った」と語り、今後住民の意志を問う形で対応を決める考えを示している。7月4日には島内で初の離島を希望する島民13名が悪石島から船で鹿児島市へ避難。船は他の有人島にも立ち寄り、希望者の撤退を進めた 。その後の報道では、5日までに延べ59名(悪石島および小宝島の住民)が避難している。避難先はホテルや避難施設で、島民の心身負担の軽減を優先する措置だ。

これほど長期にわたる群発地震の背景には、プレートの力学的な影響だけでなく、地下深部での火山・マグマ活動の可能性も指摘されている。京都大防災研究所・西村卓教授は「一般的な断層型地震と異なり、火山岩質と連動している可能性が高い」と分析 。

また、朝日新聞系の報道では、7月6日に悪石島周辺で14時01分にマグニチュード5弱、14時07分に再度5弱レベルの連続強震が起きたとされる。気象庁は同日会見で「6月21日以降、地震活動は継続しており、今後も震度6弱の揺れも想定され、引き続き警戒が必要」と強調した。地域の特殊な地質構造により、プレート間や火山帯の応力が蓄積しやすいとされ、科学的に異例の活動性を帯びている。

「7月5日大地震予言」と現実のギャップ

一部ネットでは、漫画家・龍樹諒氏の1999年作品『我所見た未来』にある「2025年7月5日、海底爆発→海嘯到来」の予言が再流布され、一時的に全国規模の不安を誘引した。しかし、作者自身はこの主張について「夢として記述したもので、実際の出来事ではない」と明言しており、政府や学術界も「科学的根拠は皆無」と繰り返し否定している 。事実、7月5日になっても日本本土で巨大地震は発生しておらず、予言はいまだ的中していない。

にもかかわらずこの予言騒ぎは人々の行動に影響を与え、航空会社の減便や観光キャンセル、スーパーでの防災用品買い込みの急増を招いた。日本気象庁の地道な発表にも関わらず、情報過多が社会的ストレスを増幅させる構図が浮き彫りになっている 。

頻発する地震により島民は慢性的な不眠や心身疲労を訴えており、実際「揺れが続く限り眠れない」「電柱が揺れて不安」であると現地の声でも報じられている 。飲料水・食料備蓄や仮設避難所の設営も始まり、学校敷地にテントを設置するなど、生活インフラの復旧と住民の安心・安全確保が急がれている 。

政府は政務官や危機管理部門を通じてモニタリングを継続、避難者の宿泊支援や島内巡回支援の検討を続行中だ。気象庁は「今後も規模5以上、震度6弱クラスの揺れに備え、避難訓練と緊急地震速報の受信体制を徹底してほしい」と呼びかけている 。